【臨床意義】
乳酸脱水素酵素(Lactate Dehydrogenase, LD, EC 1.1.1.27)は、乳酸が脱水素されてピルビン酸になる反応を可逆的に触媒する酵素です。
LDはMとHの二つの異なったサブユニットの組み合わせからなる四量体で、M4,M3H,M2H2,MH3,H4の5種類のアイソザイムが構成されています。電気泳動において移動度が異なるのは、これらサブユニットの等電点の違いによるもので、移動の速いフラクション(陽極側)から、LD1(H4),LD2(H3M),LD3 (H2M2),LD4(HM3),LD5(M4)と呼ばれています。LDは心臓、赤血球、白血球、肝臓、骨格筋などに分布し、Mは主に肝または骨格筋に存在するサブユニットで、Hは主に心筋に存在するサブユニットです。
LDアイソザイムの異常例として、心筋梗塞によるLD1の上昇、肝疾患によるLD5の上昇、悪性の血液疾患によるLD2、3の上昇が知られています。
そのほかLDアイソザイム分画の過剰あるいは欠損、偏位を示すLDアノマリーとして、サブユニットの合成欠損あるいは低形成、遺伝的変異(バリアント、腫瘍産生、不活性化因子の存在、免疫グロブリンとの結合などが報告されています。
 
【主要文献】
1)大久保昭行編. 臨床検査ガイド.文光堂, 141-144(1995).
2)中山年正, 北村元仕. Isoenzymeの分析とその意義. 臨床病理 臨時増刊号第43号,1-16(1981).
3)菅野剛史. 乳酸脱水素酵素サブユニット欠損症. 臨床病理 34, 389-392 (1986).

4)戸沢辰雄. LDHバリアントの出 現頻度と臨床像. 臨床病理 35, 707-708 (1987).
5)田中冨美子, 他. 腫瘍産生と思われるLDH. 生物物理化学 21, 187-191 (1977).
6)佐々木博, 他. 心筋梗塞患者に見られた異常免疫グロブリンG(λ)が結合した不活性血清LDHの性質.
  生物物理化学 30, 301-308(1986).

7)戸沢辰雄, 内田恵理子. LDH結合性IgA-κに結合するLDHアイソザイム. 生物物理化学 30, 185-192(1986).
8)井出純子, 他. 全自動電気泳動装置エパライザ2の基礎的検討, 日本臨床検査自動化学会会誌 28, 364(2003).
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LDアイソザイム ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

LDアイソザイム パターン例

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